
力強くリニアな加速
筆者は、実はほとんどA/T車を
運転したことがない。免許を取得して以来、自家用車はM/T車。また
トラックの仕事をしていた時に乗っ
たのは当然ほとんどM/T車だった
から、トルコンA/T車には全く乗
り慣れていない。ただ、運転経験が
少ない人でも馴染みやすいのがA/
Tの良さであるはずで、普段M/T車
にしか乗らない人間の素直な感想と
して読んで頂ければと思う。
試乗コースは、4tバン型車・大型バスで加速などを試す広いコースと、 塵芥車などの尺の短い車を使う市街地走行を模したコースの2通り用意されていた。
まずは広いコースで4t車に乗り、直線で一気にアクセルを踏み込
む。走り出すとき、一瞬だがギアが滑るような感触がある。が、それは
本当に一瞬で、その後はグイグイと
加速していく。エンジンのパワーが無駄なく駆動輪に伝わっているのだな、という実感が湧いてくる。
また、試乗の前に行われたデモンストレーションの通り、M/Tのよ
うに変速時に加速が途切れないので
短時間で速度が上がっていく。公道上でこんな加速をすることはないだ
ろうが、確かに乗用車のような感覚で運転することができる。A/Tの変則ショックは、予想したよりもずっと小さい。クラッチやギアを操作しなくてよく、余計な振動もないので、毎日トラックを運転する人の疲労が大きく軽減されるの
は間違いないところだ。
バスに最適なA/T
バス用ユニットT280(5速)を
搭載した日野ブルーリボンHにも乗
車した。試乗した車は路線バスに使
われる車両なので5速で充分だが、
高速路線や貸切に使う車なら6速は
欲しいところ。その点アリソンの製品は、制御ソフトを書き換えるだけ
で、同じユニットを6速または7速
にすることもできるという。
操作はボタン式で、シフトインジケーターが備わる。写真では操作パネルの右側に未使用のボタンが見えるが、これはアイドリングストップ装備車用のON/OFFスイッチだ。
直線コースで、アクセルをベタ踏みしてみた。アリソンのA/Tの最大の魅力は、変速時のショックが極めて小さいところ。アクセルを踏ん
でいる間、ほぼ一直線に速度が上がっていく。トルコンA/Tは変速時にゴクッという大きなショックが避けられないと思っていたが、これは
まったく違う。ショックがないわけではないが、予想していたよりもず
っと小さい。普通の人がM/Tでシフトチェンジするよりも、アリソンA/Tの方がショックが小さいのだ。
バスは旅客を乗せて走るという性質上、トラック以上に変速には気を遣うが、アリソンA/Tなら道路状況さえよければ電車のような加速をすることさえ可能かもしれない。立席の乗客が多い都市部のバスには、もっと普及してほしいと思う。
ハンドルをいっぱいに切って微速
で発進・後退をさせてみた。M/T
では微妙なクラッチ操作を要求されるし、またシャシメーカーが中心と
なって開発しているAMTなどが苦手とするシチュエーションだが、アリソンA/Tを搭載したバスの動きは大変滑らかだ。
ある程度速度を出したところからアクセルを緩めると、そのまま惰性で走っていく。こういう場合、
AMTでは即座にシフトダウンする場合が多いが、今回の試乗車ではそのような制御は積極的には行われなかった。ブレーキに多大な負荷がかかる中・大型車は、アクセルオフで即1段落とす、という制御でも問題はないだろう。A/Tは補助ブレー
キの効きが悪い、というイメージは
根強く残っているので、それを払拭できるような動作であったら、と思う。
小刻み発進でA/Tの良さ実感
続いて市街地コースを走る。3回
連続の一時停止やクランク、後退し
て方向転換など、狭い路地を走る塵
芥車などを想定したコース設定だっ
た。試乗車もそれに合わせて塵芥車
が用意されていた。個人的にA/T
車が一番楽だと思ったのは一時停止
の連続。M/T車では小刻みな発進
停止を繰り返すのが億劫に感じることがある。精袖的な疲労が蓄積すると、仕事への意欲も減退してしまう
だろう。その点、A/Tなら運転にウンザリすることはない。また、いちいちPTOのスイッチを操作する必要がなく、作業の手間が省ける。
このほかに小刻み発進・停止を繰り返さなければならない身近な場面
といえば、渋滞である。M/T車の
運転中に渋滞に巻き込まれ、両足ともに疲れ切ってしまったという経験をお持ちの方は多いはずだ。現状では渋滞が発生しない日はありえな
い。こんなとき、A/T車なら運転の容易性を最大限に発揮できる。渋滞の多い都市部のトラックには、極めて必要性の高い装備と実感した。
A/T車ドライバーの意識
アリソンA/Tを搭載したトラッ
ク・バスが非常に運転しやすいこと
は、短い試乗の時間だけでもよくわ
かった。まさに"乗用車感覚"と言ってしまってよいと思う。
少々話が脱線してしまうが、一つだけ商用車へのA/T搭載の課題を挙げるとすれば、ドライバーの"プロ意識"をいかに育てるか、という点だ。トラックやバスは、乗用車よ
りもはるかに重量が大きい。従って、
ひとたび事故となれば乗用車よりも被害が大きくなりがちだ。A/T車
が''イージードライブ"なのは確かだが、責任まで"イージー"になる
わけではない。運転に対してはM/
T車以上の慎重さと余裕を持ちたい
ものだと思った。(永井)
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