
- ■INTERVIEW
- 「CNGエンジン」と「アリソンAT」のコンビネーションテクノロジー
世界の自動車保有台数は約7億台超。これが、今後約25年で倍増するという予測もある。石油資源の有限性を考えると、代替エネルギー車の導入が必要になるが、同時に残された石油資源を大切に使うことも重要になる。現在、世界で確認されている石油の可採埋蔵量は162億klとされており、可採年数が43年というデータもある。一方、今後10数年間に世界の石油生産量はピークを迎え、その後は減少し始め、石油価格は石油生産量の減少に伴い上昇すると推測されている。また、一部には石油資源の枯渇に伴う動きが早い時期に現れるという、いわば悲観論も出ている。
石油以外の主な化石燃料として、天然ガスがある。確認されている可採埋蔵量は144兆m³、年生産量が2.3兆m³、可採年数にして62年と予測されている。石油と天然ガスの埋蔵量を比較するために、概略の平均発熱1量を推定して換算すると石油を1としたときの天然ガスは1となる。1:1の割合と見られており、自動車1台当たりのエネルギー消費やCO2排出を技術で補うことが急務とされている。
冒頭で述べたように、白動車の保有は伸びる一方で、保有台数が増加した分だけ1台当たりのエネルギー消費やCO2排出量を削減しなければならないことになる。その対応策として日産ディーゼルは、'94年に中型トラック「コンドル」にCNG(圧縮天然ガス)エンジン搭載を検討し、'96年に生産開始した。以後100年から市場の需要は高まり、'05年には年閤650台の生産に至っている。そして、国内市場の2台に1台が日産ディーゼル車という、まさにCNG トラックのリーディングカンパニーとして独走し続けている。
今回は、前号に続き日産ディーゼルの中型トラック「コンドル」CNG車開発の推進役を担う、マーケティング商品本部 商晶企画部シニアエキスパートの南 清志氏に話しを聞いた。
日産ディーゼル工業(株)
マーケティング商品本部
商晶企画部シニアエキスパート 南 清志さん
「エンジンを8リッターボリュームアップしたことで、排出ガスにおいてもトルクにおいても余裕が生まれました」
新長期排出ガス規制値よりNOxを75%以上低減した「コンドル」CNG車の実力
本誌 中型トラック「コンドル」CNG車は、国内市場の2台に1台が「コンドル」と伺っておりますが、その仕様構成はどのようなものてすか。
南 普通トラ・.クてCNG重二)'96〜'05年に生産された仕様別構成を見ると、バン・ウイング、冷凍車などカーゴ系が52%を占めております。
また、GNG車のイメージが強い塵芥収集車は24%、国土交通省などが推進している道路作業車は15%、コンテナ車が6%、その他の車両が3%で構成されています。
本誌 CNG車の特徴について、市場ではどのように受け入れられていますか。
南 第一に挙げられるのは、クリーンな排出ガスで煤が少なく、PMは排出されないことからNOx・PM法、保有期限や走行規則を受けないことが理由にあると思います。また、CO2の発生が少ないという燃料特性をもつメタン主成分のため、炭素と水素の割合から炭素が少なくCO2の発生が少ないことも挙げられています。
ただ、それはガソリン車と比較してのことで、ディーゼル車との比較では効率が違うため、その分相殺される部分もありますが、それでもディーゼル車よりCO2が少ないことも理由として挙げられていると思います。また、安定供給についても、石油の40数年といわれている可採年数に対して、天然ガスは60数年と推定されています。同時に、天然ガスは世界各地で採れるが、石油は中東に集中していて遠く、安定供給に不安があることから、天然ガスが期待される理由になっていると思います。
さらに、燃料価格の面でも安定した価格が期待できることも大きな理由になっていると思います。とくに昨今の石油価格の高騰から不安定な状況にある中で、天然ガスは比較的安定していることが挙げられます。
本誌 '06年春に発売した「コンドル」CNG車は、新長期排出ガス規制をクリアしているだけでなく、その先にあるポスト新長期規制レベルにも対応できていると伺っております。
南 平成17年新長期排出ガス規制値(PM0.027g/kWh以下、NOx2.0g/kWh以下)が07年8月まで継続生産車として発売されますが、これに対してCNG車の場合、新長期に対比してPMは無論のことNOxにおいても75%以上低減したレベルになっております。また、'06年春からエンジンを従来の6気筒FU型6.9ℓ から、6気筒JO8C型8ℓ にボリュームアップを図ったことで、排出ガスの面においてもさらに余裕が生まれました。
本誌 従来のFU型はターボインタークーラでしたが、新型車ではNAエンジンにしていますね。その理由は何ですか。
南 新型に求めたエンジンは最大トルクでした。JO8C型は、1000回転で最大トルク(608N・m[62kg・m]/1000rpm)を発生するため乗りやすい車両になりました。
また、燃焼方式については、従来のリーンバーン方式から理論混合比三元触媒(ストイキ)方式を採用しました。さらに、'06年4月にPレンジ付き2〜5速ロックアップ機構式AT車をラインアップしております。

本誌 ディーゼルとハイブリッドを比較してCNG車はどこに利点があるとお考えですか。
南 新長期規制をクリアしたディーゼルをベースに考えると、CNG車は環境性能と騒音・振動・臭い、それに燃料費の面に優れています。
また、ハイブリッドの場合は、それらの性能に加えて航続距離に優れています。しかし、メンテナンス費、導入時のコスト、積載量においては、CNG車、ハイブリッド車とも劣っています。
本誌 CNG車は、どのようなユーザーに適していると考えますか。
南 環境に対して前向きな荷主の荷を扱う運送事業者に最適かと思います。とくに、ISOの導入またはグリーン認証に関心の高い荷主に受け入れられる傾向があります。また、食品、衣料品、医療関係などで黒煙や臭いを嫌う環境で稼働する車両、騒音を嫌う環境で稼働する車両などに効果を発揮すると思われます。さらに、市街地走行をメインにする車両や、CNGスタンドが近く、配送コースにスタンドがある地域のユーザーに受け入れられているようです。
本誌 CNG車で課題となる航続距離については、どのような対応を施していますか。
南 新型車では、180ℓ の燃料容器を2本標準装備したことで、約300km(燃費を4.2km/N・m3に仮定)の走行を可能にしています。またスーパーロングランタイプとして大きめの213ℓ の容器を2本、オプション装備として設定しておりますが、これは、ホイールベースが長いK尺でないと搭載できないという制約があります。しかし、このロングランタイプで約360kmの走行が可能です。さらに、塵芥収集車やコンテナ車など、キャブバックに180ℓ の容器を3本搭載するオプションタイプは、航続距離を約450kmにアップしたことで、これまでディーゼル車に対して不
利とされていた航続距離においても凌駕しております。

本誌 新型のCNG車のエンジンはJ08C型6気筒8ℓ のディーゼルをベースにしたものですが、着火源に軽油を使用するデュアルフェール方式の考えはなかったのでしょうか。
南 CNGを燃料にするシステムに専焼方式とデュアルフェール方式がありますが、デュアルフェール方式の場合、軽油とCNG2種類の燃料を持つことになるため燃料容器のスペースの制約があります。また、着火源とする燃料に軽油を使用する関係上、NOxとPMが増加してしまうため、今回はインジェクタによる火花点火方式(専焼方式)を採用しました。
本誌 トラックに求められる熱効率の改善として、ガス中に白己着火性の高いガス成分ブタンを使用する方式は考えなかったのでしょうか。
南 たしかにCNGは単位エネルギー当たりのC重量が少ないため、高い熱効率は期待できない部分もあります。そこで今回は、エンジンそのものに1ランク上の排気量(8ℓ )の大きなエンジンを採用することで解決策を考えました。
本誌 専焼方式に筒内直噴方式は考えませんでしたか。
南 CNGエンジンの基本となっているものは、オットーエンジンですから筒内直噴方式ですと、パワーは得られるものの燃焼温度が高くなります。するとNOxを多く排出されます。その結果デバイスを装備するか、それとも熱費を重視するか悩みました。しかし、それは今後の技術課題として考えることにしました。
本誌 CNGエンジンの耐久性にっいてはどうでしょうか。とくに、吸排気弁を含めたエンジンの運動系部品の耐久性には温度の上昇に伴う問題があると思いますが。また、デポジットの間題についてはどうでしょうか。CNGエンジンの場合、燃料による洗い流し
効果は期待できないと考えますが。
南 ご承知のように、今回のCNGエンジンにはJO8C型を採用しておりますが、このエンジンのベースはディーゼルです。したがってオットーエンジンとは違った耐久性をもっております。吸排気弁は無論のこと、通動系部品においても元々高いポテンシャルのあるものになっています。しかし、CNGはガス燃料であるため、従来の液体燃料のような冷却効果は期待できないため、どうしても温度上昇の問題からくる運動系部品の耐久性には技術的な課題がありました。また、デポジットの間題も含めたガス燃料の本質的な特性から派生する間題であり、今後の解決のための検討が必要になると考えます。

本誌 新型車では、燃料供給システムにシングルポイント燃料噴射システムを採用していますが、ガスインジェクタの技術課題でもある耐久性、とくに、しゅう動部の摩耗の向上やガスシール性の向上が挙げられると思いますが。
南 たしかに、ミキシングの向上によるNOx低減には、ガスインジェクタの先端形状によってインジェクタの噴出孔下流に筒状の混合気形成にはインジェクション方式に利点があると思います。
本誌 そうすると、レギュレータもシステム構成上重要な要素部品となりますね。
南 元圧が満充填から空タンク近くまで大きく変わる中で、安定した2次圧のガスを供給する機能が必要になります。シングルポイント方式の場合2次圧は約3〜8気圧で使用されていることが多いが、構成部材の信頼性を確保して、いかに安定した調圧特性を持続できるかが課題としてありました。今回はそれらをクリアできたことが大きな成果だといえます。
本誌 最近のCNGエンジン開発の動向を見ると、CNGには環境改善と代替燃料の開発のうえで、大きな期待がかかる。それだけにCNGは可能性を秘めた燃料であると思います。なお、今回はCNG車のエンジンの問題に終始してしまったが、次の機会には車両の話題を中心に伺いたいと思います。大変ありがとうございました。
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