
アイシンGMアリソン(株)
技術部部長 江藤 聖一さん
ATはエンジン制御と駆動制御の両立に適していることから、今後は新たな視点から需要が高まるものと期待しています」
本誌 江藤さんには、わが国におけるATの将来に向けたイノベーションとしての技術について伺ってみたいと思います。まず、今日のトラック・バスに求められる技術には、環境問題、省エネルギーの問題、安全の問題などさまざま挙げられますが、その中で最優先課題となるものは何でしょうか。
江藤 私どもでは、2010年に国内のAT普及10%、台数規模で約1万台を目標に置いておりますが、これは無理な数ではないと思っています。その根拠とする要因には幾つか挙げられます
が、排出ガス規制強化も一つの需要を押し上げる要因になると考えます。今後の排出ガス規制は、抜本的な技術対応に進むと指摘されていますが、それに伴い制御の高度化がさらに進
むと予測されます。元来、ATはエンジン制御と駆動制御の両立に適していることから、これまでと違った視点でATが見直される
と期待しています。また、ATは機械的
にトルク増速機能を備えていますから、排出ガス規制対応で出力特性が低下しても補えるという利点をもっております。
さらに、安全、燃費の点でもATはイージードライブの実現による安全運転の確保やAT特性を生かしたスムーズな走りにより省燃費が実現されるなど、ATの使い方次第でメリットが生み出
きれるものと確信しております。
本誌 燃費の向上は、ユーザーにとって最も緊急を要する課題となっております。しかし、イメージとしてCNG車は環境に対する要求から需要を拡大してきたものでした。このCNG車との相乗効果でAT需要も期待されると思いますが、どのように考えられますか。
江藤 CO2削減やエネルギー消費抑制の観点からも、CNGエンジンの高効率化へのねらいは不可欠なシステムだと考えます。同時に優れたATの要求も不可欠になります。つまり、燃焼の定性を維持しつつ要求されたエンジントルクを実現する制御方法やトルクの応答性が良いシステムが提案され.てくるものと思います。
それには、燃費性能だけでなく運転性能の向上をねらった、たとえばロックアップ付5速AT(有段白動変速機)が拡大的に採用されるものと考えます。
本誌 ATの変速比連続可変特性は理想のシステムとしながらも、エンジンを任意の条件で運転することが可能なわけですね。
江藤 それには、CNGエンジンとATの統合制御手法が求められますが、ドライバーの要求する駆動力を効率よく実現する統合制御システム。つまり.エンジンとATの有段化を統合したパワートレーンを確立し、ドライバーのアクセル操作だけで、エンジンスロットルの弁開度とATの変速段が決まるといった理想のシステムが確立されると思います。
本誌 エンジン出力と変速段の駆動力が車両の出力を決めるということですね。すると、理想とするエコノミー・パワーレンジの駆動力も統合制御することによって任意に設定することが可能になりますね。
江藤 ドライバーがアクセル操作によって求めるものは車両の加速度、すなわち駆動力です。すなわち、ドライバーの要求する駆動力を実現するために、電子制御スロットを用いることでエンジン出力を操作する技術や、エンジンとATを統合的に制御する技術が
求められます。
本誌 「コンドル・MK」CNG車に搭載された、アリソンATの"S1000シリーズ"は、理論制御を行うことで、プレーキング時のスムーズなシフトダウン、また、排気ブレーキの効きをマニュアル車並みに実現するなど、きめ細かな変速制御をすることで、トラックに最適
なシフトフィーリングを実現した。さらに、変速ショックをほどよく抑えることで、ドライバーに「安心安全」を享受している。そこには、CNGエンジンと5速ATのコンピュータにより結実された"愛称"の良さがある。それは、コンビネーションされた成果によるものといえると思います。
今回は、日産ディーゼルの中型トラック「コンドル・MK」に搭載した、CNGエンジンとアリソンAT"S1000シリーズ"のコンビネーションされたパワーシステムについて話しを伺うことができました。その中に、次世代のパワートレーンの姿を垣間見られたことは大変有意義な時間でした。どうもありがとうございました。

本誌 新型車では、燃料供給システムにシングルポイント燃料噴射システムを採用していますが、ガスインジェクタの技術課題でもある耐久性、とくに、しゅう動部の摩耗の向上やガスシール性の向上が挙げられると思いますが。
南 たしかに、ミキシングの向上によるNOx低減には、ガスインジェクタの先端形状によってインジェクタの噴出孔下流に筒状の混合気形成にはインジェクション方式に利点があると思います。
本誌 そうすると、レギュレータもシステム構成上重要な要素部品となりますね。
南 元圧が満充填から空タンク近くまで大きく変わる中で、安定した2次圧のガスを供給する機能が必要になります。シングルポイント方式の場合2次圧は約3〜8気圧で使用されていることが多いが、構成部材の信頼性を確保して、いかに安定した調圧特性を持続できるかが課題としてありました。今回はそれらをクリアできたことが大きな成果だといえます。
本誌 最近のCNGエンジン開発の動向を見ると、CNGには環境改善と代替燃料の開発のうえで、大きな期待がかかる。それだけにCNGは可能性を秘めた燃料であると思います。なお、今回はCNG車のエンジンの問題に終始してしまったが、次の機会には車両の話題を中心に伺いたいと思います。大変ありがとうございました。
1 / 2 / 3
<< 前のページへ