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ワーキングビーグルズ 2007年12月号

中型車で試すアリソンATの実力

この秋,アリソン製ATを搭載する2台の中型トラックに公道試乗する機会を得た。8月には同社の試乗会(27ページ)で様々なAT車を乗り比べたが,試乗会は平坦な会場内のコースを走るだけだったので,発進停止の感触は得られたが,公道とは環境が違うため,実際の路上ではどうなるのだろうか。
試乗車は横浜市金沢区の同社サービス特約店・ヨコハマテクノスに用意された中型トラックで,2007年式日野レンジャー(アリソンSI000搭載,型式二BDG-FD8JLWA, GVW 7,990Kg)と2006年式三菱ふそうファイター(アリソンS1000搭載,型式:PA-FK61F, GVW 7.965Kg)の2台で,いずれも試乗会に登場した車両である。なお両者ともトランスミッション部品を搭載することで、ほぼ定積状態となっていた。
今回の試乗コースは,金沢区を始点に近隣の工場地帯を走行し、横浜横須賀道路で久里浜に至るコースの往復である。距離はおよそ90kmと短いが、発進停止の多い市街地や地方道,幹線国道、高速道路など様々な走行状況を盛り込んだルートとした。

AT車なので左手はハンドルに、そして左足は常にフリーシフト操作に遣う神経を,他の運転操作に振り向けられ,安全性向上にも貢献する

「誰でもすぐに、安全に」がATのメリット

  キーを受け取るとすぐの出発となった.車両はいずれも外観からはAT搭載車とわからず,ドアを開けて初めてATということがわかる。ドライバーの左側,通常のシフトレバー位置に収まっているATセレクターは、よく見かける乗用車用ATと同様にP(パーキング)レンジやOD(オーバードライブスイッチ)の付いたもので、操作方法に戸惑いはない。エンジンを掛けてブレーキを踏みつつDレンジにシフトすると準備完了となるが,実はもうここでATならではのメリットを享受している。というのも、レンジャーとファイターのMT車ではシフトパターンが異なっているからなのである。通常の発進段である2速が、レンジャーは左下なのに対してファイターは上となっており、パターンを確認せずに「慣れたポジション」に押し込んでしまうとローまたは3連の可能性もある。ATならば直線の上下だけなので間違えようがない。複数車種を取り揃える事業所や,たまにレンタカーで使う場合などを考えるとメリットの大きさが理解できよう。

目野レンジャーAT車が積浜横須賀道路を快走する,スムーズな加速で本線に楽々合流し、アップダウンのある道路でも速度コントロールはアクセルペダルのみ,誰にとっても運転しやすいのがAT車のメリット

 トラックが動き出したら,次は構内を抜けて路上に出るのだが、ここで次なるメリットを享受する。駐車してある場所から道路までは目と鼻の先なのだが、そのわずかな距離で,置いてある資材を避けつつ直角に曲がらないといけない。このような場所ではトルコンATならではの使い方が有効で,ブレーキを緩めるとクリープでじんわりと車両が動き出す。構内のような場所での微速前進にはこれで充分で、MT車ならクラッチの断接とプレーキで両足を忙しく使うような場面でも、AT車は右足一本で事が足り、こちらもメリットは大。

 門の所で一時停止し、それなりに交通量のある工場地帯の道路へ進入一またもやトルコンATの恩恵に浴しているのだ。交通の切れ目をねらって合流するのだが、この際もATは構内からDレンジに入れたままで,クリープを使ってゆっくり道路に顔を出し、後はブレーキを踏んで待機しているだけ。交通が途切れたところで再度左右を確認し,足をアクセルペダルに置き換えれば即座に発進できる。これがMT車だったら、門の一時停止でクラッチを切り、出口の段差でアクセルを微妙に調整しつつ道路に顔を出してクラッチを切り、交通がなかなか途切れそうになければベアリングの負担が心配になってギヤをニュートラルに戻し、タイミングを見てクラッチを踏んで2速に入れて、左右を確認してようやく発進…と実に忙しい。いつもMT車で無意識のうちに行ってい るとはいえ、実はこれだけの動作をしており、それは安全面など神経の遣い方にも大きく影響をしていると言えないだろうか。

 少し進むと前方の信号が赤になった。排気ブレーキで減速して最後はフットブレーキで停車し、そのまま青信号を待つのがAT車。MT車の場合にどれだけの動作が必要か書くまでもないだろうが、あえて書くと、排気ブレーキとシフトダウンで速度を落とし、最後はブレーキを踏んでクラッチを切り、信号のタイミングに合わせて2速にシフトしてクラッチをつないで発進、こちらも書いてみるとかなりの動作ということがわかる。

産業道路の右折待ち車線のように、一寸刻みで動くような場合でもAT車は苦にならない。車間が開けばブレーキを緩めるだけでじわりと前進

  工業地帯は交通量も多く、場所によっては少し動いては止まり、ようやく動き出してものろのろ運転という状況だったが、このような状況でのATのメリットは言うまでもないだろう。基本的にクリープで事が済み、のろのろ運転時でも若干のアクセルとプレーキ操作だけで済むATに対して、頻繁なクラッチ操作と2⇔3速を忙しくシフトするMTでは,物理的にも精神的にも疲労度は比べものにならない。

 それでは高速道路はどうだろう。ATのメリットを感じるのは、加減速を伴う料金所の通過と本線への合流である。誰しも停車していた昔と異なり、ETCと通行券の混在する料金所では、通過する車両の速度に非常に大きな差がある。AT車ならば通行券を受け取った後は他の車両に注意しつつ、アクセルを踏み込んでなるべく早く速度を上げればよい。本線への合流も同じで、動作はアクセルの踏み増しだけで、トルコンATは非常に滑らかに加速する。一方MTならば、周囲への注意に加えて頻繁なシフト操作、変速時のトルク切れによる一時的な減速、さらにクラッチやシンクロへの配慮など動作と神経の遣い様がはるかに多い。またATならばアクセルを踏んだままでも経済的なエンジン回転数で変速するのに対し、MTはグリーンゾーンを越えてあっさりとレッドゾーンに近づき、エンジンへの負担も高まってしまう。わずかな距離を走っただけでも、これだけのメリットがある。誰でもすぐに運転でき、かつ神経を安全確認に振り向けられるのだから、操作性は明らかにMTに対して優位性がある。

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